XF CUP 2020 第2回 日本クラブユース 女子サッカー大会(U-18)

グループリーグA・B、大会初日をレポート

第3回大会は感染対策に加え、暑熱対策も行う難しさ

今大会は『 夏開催 』に戻った。

初日、試合開始30分前に計測したWBGTの値は29℃。早朝は「太陽が雲に覆われた」影響もあって、試合を実施する基準値を満たすに至った。ちなみにWBGTは暑さ指数と呼ばれ、大会要項では暑熱対策として「WBGT=31℃以上の場合、試合を行わず中止とする場合がある」と記されている。

実施の場合は熱中症対策として『クーリング・ブレイク』などを取り、選手の健康面への配慮がなされる対策を講じることになっている。1月の第2回大会の経験を生かし、今大会も引き続き「新型コロナウイルスの感染対策は当然行う」が、それに加えて『 暑熱対策 』にも十分に気をつけたいこところだ。

第3回大会は、毎試合18名の登録メンバー以外はベンチに入れず、控え選手にはマスクの着用が義務付けられている。また、U-18世代の試合は45分ハーフの90分ゲームが通常だが、35分ハーフの70分ゲームが採用されている。交代は5名までを認め、大会事務局も選手の安心安全を守るために最大限の努力をしている。

まずはこういう環境下で開催されている大会であることを認識していただけたら幸いだ。その上で、初日はコーエィ前橋フットボールセンターで行われた次の試合を見た総体的なレポートをお届けしたい。

▼グループA
・三菱重工浦和レッズレディースユース(関東①) 2-2 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18(関東⑦)
・マイナビ仙台レディースユース(東北①) 14-0 清水FC女子(東海②)

▼グループB
・スフィーダ世田谷FCユース(関東②) 1-2 横須賀シーガルズJOY(関東⑥)
・セレッソ大阪堺ガールズ(関西①) 3-0 SolfioreFC作陽(中国①)

つなぐ→いなすスキルの向上によりボール運びが安定

4試合を通じた第一印象は、第1回大会に比べて、どのクラブも『 つなぐ 』意識が高まったことだ。

3年前は最終ライン付近で危険な場面があると大きく蹴り出し、アウト・オブ・プレーが多かったが、今大会は守備ラインに位置する選手たちが慌てることなく、冷静に次につなげるためのプレーを選択していた。

特に最終ラインでボールを持った際に相手チームが仕掛けてくる最初の守備を『 いなす 』スキルは、どのチームも標準装備していた。もちろんレベル差があって、守備側のプレス速度が上回っていた「マイナビ仙台レディースユース×清水FC女子」の例もあるが、他は非常に落ち着いたプレーを見せていた。

このポイントの一つに、ファーストコントロールのレベルアップが挙げられる。

多くが足下にきちんと収まるため、守備側が容易に飛び込めないようになっている。それとセットで言えることは、周囲のポジショニングの向上もある。攻撃時はチームの戦術によって自分の基本ポジションから計算された立ち位置を多くの選手がとれているため、ボール保持者が「そこにいるはず」だと安心してプレーできている。

これによって安定したビルドアップが可能となっていた。

基本的にどのチームも守備の意識が高く、素早く基本ポジションを取るため、これまでの大会よりも穴(隙)が少ない印象を受けた。そのせいもあり、どうしても中央の守備が堅いため、ボールがサイドに回ることが多かった。あくまで傾向の話だが、ボールが「 Uの字 」に動く回数が多かったように思う。

当然、これ自体は悪いことではないが、ボールを保持することは『 ゴールを狙う 』ことが前提にあるので、そこから離れた場所でどんなに上手にボールを扱っても点数には結びつかない。

どうゴールに対しアクションを起こすのか。
どう中央を活用、また最短距離で攻めるのか。

これらの課題は、残念ながら東京オリンピックのベスト8で負けてしまった「なでしこジャパン」の試合を観戦していても同じような現象が見られた。これは過去男子サッカーにも似た傾向があった。全体的に足下のスキルが向上すると、どうしても余裕をもってプレーできるサイドにボールが回ることが増える。

しかし、これは攻撃速度を下げる結果になるため、安全にボールを保持することはできるが、一方で相手が守備陣形をそろえる時間を稼げるため、ゴールへの確率が下がることになる。この部分に対して、どう取り組むのかが勝利を大きく左右することになる。

今回の4試合で、この部分を打開しようと積極的なプレーが見られたのが、マイナビ仙台レディースユース、横須賀シーガルズJOY、セレッソ大阪堺ガールズの3チームだった。

ゴールに対する積極的なアクションを起こしたチーム

この3チームの中でゴールに対して最短距離を狙っていたのは、横須賀シーガルズJOY。

このチームはゴールに対して直線的に攻める回数が比較的に多い。別に最終ラインから丁寧につながないわけではない。きちんとつなぐ足下のスキルは持っているのだが、「まずゴールに対して直線的に裏を狙う」プレーを選択する傾向にある。最終ラインからでもチャンスがあれば裏に大きくボールを蹴り込む。

このプレーは確率的には『 低い選択 』かもしれないし、相手ボールになる確率は高いが、彼女たちは思い切りがいい。これは日頃から「監督がこのプレーをOK」だと評価しているから出せるプレーである。男女を問わず、現状の日本サッカーからするとあまり評価されないプレーだが、相手にとっては怖さを感じる。

バランスが大事であることを語った上で、なおゴールに向かって直線的に素早くプレーする選択をできる選手を評価する土壌を作ることが大切だ。そういう意味では、セレッソ大阪堺ガールズは常に相手の背後を狙える好チームだった。

このチームの特徴は、ボランチにある。

攻撃の出どころの多くを、このポジションが担っており、相手チームからするとここで一度守備が絞られる。そのため、セレッソ大阪堺ガールズのサイドは余裕をもってボールを扱うことができる。しかも、ボランチから斜め前方向に鋭いスルーパスも出てくるため、相手にとっては的が絞りにくい。

SolfioreFC作陽はかなり手を焼いていた。ポイントは一度中央を活用していることにあり、『外→中→外→中…』と相手守備陣を揺り動かすのは攻撃の常套手段である。基本と言えば、基本的なことだが、これをやり続けられることは大きい。体力のある前半は粘り強く対応できても、後半になって体力が低下してくるとその攻撃に対応していたチームもどこかに穴(隙)ができる。

チーム全体で粘り強く、中からも、外からも、攻撃を仕掛けていたマイナビ仙台レディースユースは大きな勝ち点3を獲得できたチームだった。

まず、中央から攻めることに意識を傾け、クサビのパスを狙っている。相手陣内のセンターサークルからペナルティエリアまでの間で一本のパスを通そうとチャレンジすることにより、守備が小さく固まる。そこで空いたサイドを上手に使って数多くのゴールを生み出した。

力の差があったとはいえ、意図を持った正確なプレーが実行できなければここまでの得点は記録できない。いずれにしろ、この3チームと他のチームとの違いは『 まずゴールに対して素早くアクションを起こしたか 』という点である。

まだ「力が拮抗した場合に同じようにプレーできるのか」という点は見極められないが、少なくとも「ゴールに向かってプレーする意識」という点においては日頃からのトレーニングで実践していなければ急に表現することは難しい。勝ち切るサッカーの実践は、数か月後に開幕する『.WEリーグ』の観客動員にも大きく影響する。

明日以降、この3クラブが力のあるチームに対して同じようにプレーができるのかを楽しみに追っていきたいと思う。

 

文責=木之下潤

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