XF CUP 2020 第2回 日本クラブユース 女子サッカー大会(U-18)

グループリーグC・D、大会2日目をレポート

戦術は「個が前を向くこと」からスタートする!

大会本部がある『コーエィ前橋フットボールセンター』では、毎日ピッチ4面で熱戦が繰り広げられている。今日は、Aコートに前回大会で優勝した『 JFAアカデミー福島 』が登場した。そこで、会場に向かい取材を始めると、試合開始直前に山口隆文監督が選手にいくつかのアドバイスを送っているところだった。

その中で一番強調していたことがある。

それは「どうオープンに前を向くか」だった。続けて、「戦術は前を向くことから始まる。前を向かないと何も始まらない」と選手たちにゴールに向かってプレーすることの大切さを伝え、その第一歩が『 前を向くこと 』だと強く語っていた。

つまり、オープンに前を向くことは『 ゴールを陥れるための味方とのコミュニケーションの始まりだ 』と言えるだろう。

長年、ジュニアからユースまで育成年代を取材していて思うことだが、足下の技術が高くなり、パスが回るようになると日本のチームはサッカーが小さくなる傾向がある。そうすると、ボール欲しさにサポートの位置がボール保持者と近くなり、前を向くより効率よく後方にいる選手に簡単にボールを落として任せるようになる。

一見、攻撃側にとっては細かくパスが回り緻密なサッカーを表現しているようだが、守備側にとっては一気にゴールを狙われる怖さはない。もちろん翻弄はされる側面はあるが、守備者にとっては認知エリアが小さく、自分たちは前を向いているため、攻撃側への仕掛けに対する潰しが起こしやすいので精神的なプレッシャーは薄れる。

しかも、日本の選手たちはその手の攻撃的なプレーに気持ちよさを覚え、酔っているところがある。

割とそういう細かいパス回しのイメージから離れられず、似たようなプレーを目指すことが多くなる。何のためにボールを保持し、何を目的に攻撃を仕掛けるのか。自分たちの気持ちいいプレーイメージに囚われるほど手段だったはずのものが目的に成り下がる。

2日目を終え、今大会に出場しているチームを一通り視察できたが、細かいパス回しの幻想に囚われ、目的を見失うシーンが数多く見られた。足下の技術の高さを有効活用するには、そのパス回しの中で気持ちいいプレーイメージをいかに壊し、一気に相手を混乱に陥れるかが大きなカギを握る。

そのプレーの始まりが『 いかにオープンに前を向くか 』である。

大会2日目は、こういうことをテーマにコーエィ前橋フットボールセンターで行われた次の試合を見た総体的なレポートをお届けしたい。

▼グループC
・JFAアカデミー福島(東海①) 8-0 FC今治レディースNEXT(四国①)
・ちふれASエルフェン埼玉マリU-18(関東⑤) 0-1 AC長野パルセイロ・シュヴェスター(北信越①)

▼グループD
・日テレ・東京ヴェルディメニーナ(関東③) 11-1 クラブフィールズ・リンダ(北海道①)
・1FC川越水上公園メニーナ(関東④) 8-0 福山ローザスレディース(中国①)

優勝候補の2チームはまだチームづくりの過程段階

前回王者のJFAアカデミー福島は、まだチームづくりの過程だった。

誰が何をするのか。
次にどういうプレーをしたいのか。
その先に誰が呼応して動くのか…。

現状は、さまざまなプレーが手探りの状態だった。足下の技術の高さがあるため、ボールは保持できているが、次のプレーを前提とするコミュニケーション、またグループとして複数人が絡むようなコミュニケーションができるにまでは至っていない。

それでも試合を通じ、実践の中で味方同士のコミュニケーションを深めている。そんな印象を受けた。試合前に山口監督が言っていた『 オープンに前を向く 』ことについては物足りなさを感じることが多かった。ボールの流れを見ながらポジション修正をする速度が足りず、本当は前を向けたはずなのに、ボールが足下に到達した段階で体自体が後ろ向きになっていたりとまだまだ修正するところは多い。

しかし、相変わらず、ボールを大きく左右に動かし、後方から前へと侵入してくる3人目、4人目の動きは他のチームにはない魅力的なプレーで「今まさにチャレンジしているところ」だということが伝わってきたので、大会中に成長していく姿に期待したい。

チームづくりと言えば、優勝候補の一つ『 日テレ・東京ヴェルディメニーナ 』も、まだ過程の段階だという印象を抱いた。

お家芸とも呼べる細かいパス回しの中でプレーイメージの共有、意志の疎通を図っているようで、トップギアには程遠い。そんな中でも技術の高さを発揮し、2試合連続で二桁得点を奪っている。

ただ一つ気になるのは、「前を向けるタイミングで前を向かないこと」だった。もちろん無理する必要がないわけだが、今後は対戦相手のレベルが上がり、プレッシャーは高くなる。そうなると前を向けないケースが増えてくるが、この段階で前を向く意識を高め、本番を通して「しっかりと前を向き切る」プレーを鍛錬しておかないとチーム全体のプレー速度に大きく関わる。

後ろに戻し、ゲームの作り直しばかりをしていてもゴールチャンスは生まれない。やはり優勝を狙って勝ち進むためには、チーム全体がプレー速度を上げることは必要不可欠になる。今後、日テレ・東京ヴェルディメニーナがゴールに向かってどのようにスピードある攻撃を構築していくのかは、一つの見どころだ。

北信越の強豪が全国の強豪へと変貌しつつある

そして、今日、大きな驚きだったのは『 AC長野パルセイロ・シュヴェスター 』の成長だった。

このチームは3大会連続出場中で、北信越の強豪だ。しかし、全国大会に出場すると毎回『関東』『関西』という大都市エリアの壁に阻まれ、1勝もすることができなかった。しかし、今日はちふれASエルフェン埼玉マリU-18と互角の戦いをしていた。

相手と激しく体をぶつけることを恐れず、積極的に前を向き、前に仕掛けるサッカーを行っていた。これまで気持ちの面で負けることが多々あり、試合も半ばをすぎるとただただ守備に奔走し、ボールを後から追いかけるだけのシーンが目についたが、今大会はゴールに対して戦えるようになっていた。

目立った変化は主に4つ。

・ファーストコントロールのレベルアップ
・前線で体を張れるようになったこと
・中盤で前を向けるようになったこと
・大外から裏への抜け出しを狙っていること

これらは当たり前のプレーと言われたらその通りである。しかし、強豪相手にこれを当たり前にやるには、日頃から意識の高い練習を必要とする。きっとAC長野パルセイロ・シュヴェスターはクラブスタッフを含め、そんな当たり前のことから見直したのではないかと思う。

全国大会と言えば、見ている人たちは華麗なプレーばかりを想像するだろうが、実は基本的なプレーをどれだけ磨けたか、レベルアップさせたかの競争が強豪同士のぶつかり合いの根底にある。地味で素人の目には映りにくいかもしれないが、選手たちは毎日そういう基礎の積み上げに粛々と励んでいる。

間違いなく今大会のAC長野パルセイロ・シュヴェスターの選手たちは、そこが全国大会で戦えるレベルに達していた。現在1勝1敗で、決勝トーナメントに進める2位以内を狙える位置にいる。明日の休養日に体力を回復できれば十分に可能だ。今後の彼女たちの躍進にも注目したい。

今大会は熱中症対策として1日1試合の開催で、2日置きに休養日が設けられている。グループDは『日テレ・東京ヴェルディメニーナ』と『1FC川越水上公園メニーナ』が上位2チームに決定したが、他のグループはまだ上位の可能性を残すチームも多い。

8月5日(木)の大会3日目、どんなドラマが生まれるのかが楽しみだ。

 

文責=木之下潤

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