グループリーグA・B、予選最終日をレポート
休養日明けの予選リーグ最終日、『コーエィ前橋フットボールセンター』で開催された3試合を見ていると、選手たちに大きな疲労の蓄積は感じられなかった。
▼グループA
・三菱重工浦和レッズレディースユース(関東①)0-2 マイナビ仙台レディースユース(東北①)
・清水FC女子(東海②)0-6 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18(関東⑦)
▼グループB
・スフィーダ世田谷FCユース(関東②)- セレッソ大阪堺ガールズ(関西①)
※試合中止
・SolfioreFC作陽(中国①)0-2 横須賀シーガルズJOY(関東⑥)
これは第1回大会の経験を生かし、試合の実施を1日1試合で早朝に行い、さらに2日置きに休養日を設けたことが好影響をもたらしている。出場数が16チームの大会とはいえ、ここ十年ほどの気候状況を鑑みるとサッカーに限らず、他のスポーツも『 夏の大会開催 』の参考になる点は非常に多い。
選手たちの今日のフレッシュなプレーを目にして感じたことだ。まずは、この育成年代における夏の大会開催の重要テーマについて触れさせていただいた上で、各ピッチで行われた試合をレポートしていきたい。
グループAは2日目を終えて、3チームが上位トーナメントへの出場権を勝ち取れる2位以内を狙い、接戦を演じている状況だった。2日目まで勝ち点2で3位だった『ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18』は、大量得点で勝つことが次のステージに進む必須条件だった。
そして、2日目まで勝ち点4で並ぶ『三菱重工浦和レッズレディースユース』と『マイナビ仙台レディースユース』は、互いに『ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18』が勝利で勝ち点3を獲得する場合を考えると、両チームとも勝ちを目指すことが大きな確率で義務づけられている試合だった。
3日目、「清水FC女子×ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18」は前半を終えて2対0。ジェフがリードしていた。これにより得失点差で2位の三菱重工浦和レッズレディースユースは、最低でも引き分けなければ先への道が閉ざされてしまう。
前半を終え、0対0。
「三菱重工浦和レッズレディースユース×マイナビ仙台レディースユース」は拮抗した試合が続いていた。結果、マイナビ仙台レディースユースが勝ち、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18が後半に4点を追加して6対0で勝ったため、大逆転で準々決勝にコマを進めた。
残念ながら、三菱重工浦和レッズレディースユースはAグループ3位となり、上位トーナメントに名を連ねることはできなかった。マイナビ仙台レディースユースとの間にどのような差があったのか?
ここを少し紐解いてみたい。
上位トーナメントでの仙台の躍進に期待したい!
3年前、第1回大会に出場したとき、マイナビ仙台レディースユースはアカデミーが立ち上がって間もなかった。『 ジュニアユース 』を設立したのが、2016年。第1回大会の試合に目を通した限り、東北エリアの優秀な選手が集まってはいたものの、関東や関西の都市部と比べると高いレベルの試合でもまれておらず、明らかに経験不足は否めなかった。
ちなみに、第1回大会の開催は2019年。マイナビ仙台レディースは2018年に『 ユース 』を立ち上げたばかりで、チームとしてどういうサッカーをしたいのか、また個々の技術レベルにバラつきがあり、当時のチームには全国の強豪と渡り歩く力がなかった。
※参考=https://www.vegalta.co.jp/backnumber/ladies-index.html
あれから3年が経ち、今大会初日の試合を視察したとき、彼女たちのプレーの印象はがらりと変わっていた。
そして今日、関東の強豪、三菱重工浦和レッズレディースユースとの戦いでも選手たちは初日と変わらないプレーを続けていた。攻撃時は幅と深さをとり、守備時はチーム全体をコンパクトに保つ。プレッシャーの少ないサイドに簡単に起点を作るのではなく、あくまでゴールに対して最短距離を狙える『 中央に起点を設ける 』ことを基本にサッカーを展開していた。
彼女たちが披露するサッカーはオーソドックスなものだが、一つひとつのプレーの質と速度が三菱重工浦和レッズレディースユースを少しだけ上回っていた。例えば、そのプレーを挙げると次のようなことが並べられる。
・前を向く
・切り替えの意識
・味方への声のサポート
・ポジション修正の素早さ… etc
何より差を生んでいたのは『中央の活用』である。
三菱重工浦和レッズレディースユースはボールの動きが『 Uの字 』を描く。特にボランチを経由することの少ない組み立て、攻撃は守備に対する『 揺り動かし幅が小さい 』ため、相手を混乱に陥れることが難しい。マイナビ仙台レディースユースからすれば、コンパクトに整った状態で対応することが可能になるため、特に前半は比較的に冷静な対処ができていた。
また試合の入り方も、マイナビ仙台レディースユースの方がコーチングスタッフを含めてモチベーションが高かったように思う。初の上位トーナメント進出をかけていたことがあっただろうし、今大会のチームに手応えを抱いているのではないかと想像している。
関東の強豪2チームを抑え、Aグループを1位で突破した『マイナビ仙台レディースユース』の明日以降の戦いが本当に楽しみだ。
大会中の横須賀シーガルズJOYの成長に注目したい
Bグループはセレッソ大阪堺ガールズの出場辞退により「SolfioreFC作陽×横須賀シーガルズJOY」の試合は、互いに1勝を上げたチーム同士のグループ1位決定戦となった。
休養日明けの両チームだったが、後半は互いに少し切り替えが遅く、少し出足の鈍さから単調な攻防が続いていたように感じた。チャンスの場面でのパスミス、キックミスが目立っていた。それでも、3大会連続出場となる横須賀シーガルズJOYはボランチ、トップ下の二枚がよくボールに絡み、SolfioreFC作陽に的を絞らせない組み立てやチャンスメイクをしていた。
伝統的にゴールに対して最短距離を狙う横須賀シーガルズJOY。
今大会のチームは過去2大会に比べて全体的にボール扱いに長けた選手が多いため、グラウンダーのパスでシュートまで仕掛けている。先制点は最終ラインから斜めのパスを2本つないで右サイドで受け取ったトップ下のキャプテンが、細かいタッチでそのまま右から中央へとボールを運びながら周囲を伺いつつ、左サイドにポッカリ空いたスペースまで抜け出して狙いすましたシュートでゴールネットを揺らした。
そして、2得点目は自分たちのボールにするために中盤の選手がハイボールの後処理を行ってしっかりと味方につなぎ、右サイドの選手がワンタッチコントロール後に顔を上げた瞬間に交代投入されたフォワードがゴール方向に抜け出し、見事なロングパスを通してゴールを陥れた。
SolfioreFC作陽にとっては、どちらも一瞬の隙を突かれて失ったゴール。
マークの付き方、ボール保持者への対応の判断を少しでも見誤れば、全国レベルのチームでは失点につながることを思い知ったに違いない。非常によく走り、一丸となって戦うチームなので、この経験を糧にさらなる高みを目指してほしいところだ。
横須賀シーガルズJOYも丁寧につなぐことを意識してはいるが、まだまだ味方同士で「次どうする?」的な意思疎通の図り方で判断速度が物足りない。全チームに対して言えることだが、「どのチームも冬に完成形を作ろう」と、どうしても夏の大会は過程段階のため、プレー速度の鈍さは否定できない。
だからこそ守備時にボールに対して貪欲にプレッシャーをかけ続けると相手のサッカーを崩すチャンスは往々にしてあるので、次のステージではそんな駆け引きを一つの戦術として用いてもおもしろい。
明日から始まる熱い戦いに期待が高まる。
文責=木之下潤