XF CUP 2020 第2回 日本クラブユース 女子サッカー大会(U-18)

明日の優勝決定戦をかけた準決勝をレポート!

JFA福島は二枚の関係性でどうボールを引き出すか?

台風の影響を受け、朝から雨が降っていた。

ここまでの期間中は暑い日が続き、準々決勝では暑熱対策として後半『 クーリングブレイク 』が実施されるほどの環境だった。それに比べると、雨が降っていたとはいえ、今日はプレーしやすい環境だったのではないか。もちろんピッチが滑りやすい状態だったことは否めないが、選手たちは休養日明けだったことも重なって、体力的な不安もなく、勝つことだけに集中してプレーしていた。

今回の取材は会場が離れていたことがあり、前半と後半で移動を必要としたため、前半は「JFAアカデミー福島×ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18」を、後半は「マイナビ仙台レディースユース×横須賀シーガルズJOY」を観戦した。

これを前提にレポートを書き進めていきたいと思う。

▼上位トーナメント=準決勝
【ロード宮城総合運動公園サッカー場】
JFAアカデミー福島(C・1位)3-0 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18(A・2位)

【前橋総合運動公園 群馬電工陸上競技場・サッカー場】
マイナビ仙台レディースユース(A・1位)1-0 横須賀シーガルズJOY(B・1位)

まず、「JFAアカデミー福島×ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18」から触れたい。この2チームの試合はボールを保持し、主導権を握ってゴールをこじ開けようとしていたのがJFAアカデミー福島(以下、JFA福島)で、守備ブロックを敷いて素早い攻撃でなんとかゴールを奪おうとしていたのがジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18(以下、ジェフ市原・千葉)だった。

これは戦前の予想通りの内容だった。JFA福島は「どうやって相手守備のズレを生み出し、隙を突いてゴールを陥れるか」が課題で、そのための手段として素早い左右の揺さぶりや裏への抜け出しを活用することがここに勝ち進むまでに見られたサッカーの傾向だった。チームが表現しているサッカーとしてはとてもオーソドックスで、山口隆文監督が求めているものはあくまで『 個の成長 』。そんな印象を受けた。

ジェフ市原・千葉は相手ボールの動きに対して個々が素早くスライドしながら守備ブロックを敷けるチームなので、その守備のズレを生むためには「特に中盤のエリアでフリーの状態を作る」ことがポイントになる。JFA福島の基本システムは『1-4-4-2』。中盤はダブルボランチで形成されるため、この二枚がいかにフリーで、いかに危険なエリアでボールを受けられるかがゴールのカギを握る。

今日の前半、この二枚を見る限り、この部分については改善の必要があった。体力が回復し、モチベーションが高い相手に対してこの作業を行うことはハードルが高いことも十分承知しているが、やはり国内最高峰の育成機関に所属する選手だから期待をする。しかし、危険なエリアでボールを受けることが圧倒的に少なかった。

彼女たちには、ボールの引き出すスキルが足らなかった。その原因は『 二人の関係性を活用したボールの引き出し方 』にあったのではないかと捉えている。個の成長といってもサッカーは一人で行うスポーツではない。味方を利用し、敵を出し抜く賢いプレーができればいいのだ。一人ですべてを解決する必要はない。

例えば、「味方が動き出して空いたスペースを狙ってボールを受ける」など選手同士のつながりを上手に活用できるかも個人の能力である。

そういう意味では、前半のJFA福島のダブルボランチはボールサイドに近い選手が自分の背中側にいる選手のことを把握してなかったり、またボールから遠いボランチが相棒の空けたスペースを活用できていなかったりしていた。最終ラインでは左右にボールを動かすことはできても、中盤を使って相手を揺さぶることができないため、どうしても同サイドだけで攻撃を仕掛け切ることが多くなる。ジェフ市原・千葉からすると「最終的にはシュートを跳ね返せばOK」の対応で、比較的簡単に乗り切ることができていた。

そして、もう一つ気になったのは『2トップが横関係だけで相手の裏を狙おう』としていたことだった。

何本かは上手に相手の背後にフリーで抜け出し、ゴールを狙えたが、その単調な仕掛けに終始していた。フォワードが2トップの場合、相手にとって怖い攻撃を仕掛けるためには『 横+縦 』の立体的な動きが必要になる。単純に言えば、二枚のうち1人が少しポジションを下げて縦関係を作る作業が不可欠だ。

そうすると、相手からすればマークに付きにくくなる。さらに二人で交互に上下関係を作れば最終ラインからすると的が絞りにくくなる。さらにダブルボランチとの関係性に目を向けるとトライアングルを構築することができるから、パスの出口が一つ増えるから攻撃のバリエーションを持ちやすい。

つまり、チーム全体の構造から見ると「2トップ+ダブルボランチ」によってチャンスの起点を作るときに「いかに危険な場所で、フリーでボールを引き出せるか」がゴールの臭いのするプレーだったのだが、なかなか自分たちで解決することができなかった。

もちろん相手の体力が十分で隙を作らかなったとも言えるし、後半に3ゴールを決めて勝ったことを考慮するとやり続けたことは評価できる。ここまでの戦いでも粘り強く相手を左右に大きく揺さぶり、大きな展開によってゴールを決めて勝ち進んできたから褒められるべきことなのだが、どうしても中央からの崩しも期待してしまう。

決勝では、そういうプレーも見たいところだ。

今大会の仙台はチームの完成度が最も大会チーム

さて、後半は「マイナビ仙台レディースユース×横須賀シーガルズJOY」を観戦するために車で移動したのだが、会場に到着したときには1対0だった。

今大会、チームの完成度が一番高かったのが『 マイナビ仙台レディースユース 』。この試合も後半が始まって少し時間が経ってからの取材になったが、相手になかなか隙を与えないサッカーは見事だった。

どういう風に完成度が高かったのか?

その大きな要素を形成していたのが、一人ひとりの切り替えが早く、攻守にチームの穴を作らないローテーションの作り方。これはチームとしての取り組みと個人の意識付けの両方が重要で、これを体現できていたのはすばらしかった。本当に今大会の彼女たちのプレーは各チームが参考にすべきことがたくさんある。

攻守でいるべきところに必ず動く。
次のプレーのために周囲を見る。
攻守で隙があったら全力で走る。
そして、チームで伝え合う… etc.

極々当たり前のことを確実に粘り強くやり続ける。これは世界的に見ても強いチームが当たり前に行っていることだ。奇をてらったプレーはなくとも急所=隙を突き続けられるプレーは時間が経つほどボディブローのように相手を精神的に追い詰められる。

コーチングスタッフを含め、チームが作り上げてきたサッカーを信じ抜いている姿に好感を抱いた。

ただ、横須賀シーガルズJOYも精神的に負けることなく戦い続けた。「おっ」と思わず声を上げるほどシュートを打つシーンは少なかったが、中盤で繰り広げられる体を張った攻防はマイナビ仙台レディースユースに負けていなかった。

しかし、厳しい見方をすればその攻防から「一瞬の隙を作り出して、どうゴールを狙うのか」が足らなかったし、これは他のチームと同様の課題として浮き彫りになったことではないだろうか。例年になく足下の技術の高さを持つからこそ、例えば「一瞬の駆け引きで相手を出し抜いてボールを引き出す」プレーなどを覚えたりできれば、もっとチームに彩りを加えることが可能になる。

これから冬に向け、どのようなチームに成長していくのか楽しみなチームの一つだ。

マイナビ仙台レディースユースは全国大会の決勝の舞台に初めて立つことになった。相手は大会連覇を狙うJFAアカデミー福島。挑戦者として失うものは何もなく、思い切りぶつかるだけだろう。ここまでの戦いで見せてくれたプレーをいつも通り発揮し、JFAアカデミー福島にどれだけ通用するかを全力で試してほしい。

そして、明日の決勝戦は両チームともすべてを出し切って戦ったほしい。

 

文責=木之下潤

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