XF CUP 2020 第2回 日本クラブユース 女子サッカー大会(U-18)

マイナビ仙台レディースユースを準優勝に導いた小川監督にインタビュー!

『やりすぎてみないとわからない』から得た経験

第3回 日本クラブユース女子サッカー大会U-18、『 XF CUP 2021 』はJFAアカデミー福島の優勝で幕を閉じた。結果として2大会連続で栄冠を勝ち取ることになったが、前回大会とは異なり、圧倒的な力を見せつけたわけではない。

特に決勝を戦ったマイナビ仙台レディースユース(以下、マイナビ仙台)とはほんど差がなく、それは0対0のPK戦の末に優勝を決めたことが証明している。

ということは、ほかのクラブもJFAアカデミー福島(以下、JFA福島)と対等にわたり合うことが可能だと言える。結果的にJFA福島が優勝したが、チームの完成度、主体的に戦う姿勢で言えば、マイナビ仙台の方が学ぶものが多かった。

そこで、今大会のコラムの最後は、マイナビ仙台の小川翔平監督にインタビューで締めたい。

まず、マイナビ仙台がJFA福島と互角に戦えた主な理由の一つは『 1対1の勝負を五分五分にもっていけた 』ところにあると考えている。その点を探ろうと話をしている中で、私がポイントだと感じたのは『 やりすぎてみないとわからない 』精神だった。

「1対1で『最後まで相手を見るうまさ』と評価していただきましたが、私たちコーチングスタッフからそういうことを細かく指導したことはありません。ただ、そういうことを身につけた要因として狭いコートで練習している点が挙げられると思っています。球際が数多く経験できていますし、たった一つのプレーに負けるだけでゲームが動く状況下で練習しているのが大きいです。

私たちの指導方針として『やりすぎてみないとわからない』ということを掲げていて、『なんで、守備時のファーストチョイスで相手の前で止まるの?』という言葉はずっと投げかけています。まずは先手を取りに行くことから始まると考えているので、『やらない、やれない』という選択肢を第一優先にするその概念を取っ払うことを意識しています。

もちろんファウルはよくないです。ただ、行き過ぎて交わされる経験を詳細に詰めていくことが大事なのではないかと思っています。駆け引きの判断という部分も、基本的にリアクションベースだとすべてが後手に回ります。五分五分のボールも先に触れるならアクションを起こすべきだし、先に触れないからリアクションではなく、その後に何をするかを考えてどう主導権をつかんでいくかを判断する。前を向かせないで終わるのではなく、足下に収める、そのコントロールのタイミングで狙いに行く。

次のこと、次のことを考えてプレーすることを要求していった中で身につけたものだと感じています」

JFA福島の選手は、この年代の中ではフィジカルレベルが非常に高い。1対1で優位性を保てるからボールを保持できたり、相手ボールになっても即回収できたりと攻守に主導権を握ることができる大きな要因になっている。ユースという年代を考えるとシンプルにフィジカルレベルを高めることは、次のステップに進むうえで重要な要素になるので大切なことだ。

この部分に対し、マイナビ仙台の選手たちは当たり負けしない勇気とともに判断速度で対抗したと捉えられる。個人の判断速度を上げることはもちろん、チーム全体としても「次のこと、次のことを予測している」からこそJFA福島の左右の揺さぶりに対応できていた。

「JFAアカデミー福島は基本的にボールを動かして相手の隙を突くサッカーをしていました。そこで一つ考えたのが『隙って何だろう?』ということです。例えば、背後を取るとかだと思いますが、プレスをかける側がそれを隙だと認識していれば、それは隙ではないなと思っています。例えば、中切りはボールを外に追い込んで…みたいなことですが、これも選択肢を狭めながら相手の隙を作ることが目的です。

つまり、私たちのチームはそれを共有理解として守備なら『ボールを奪いに行くことが前提』としてリアクションではなく、アクションを起こす。

これが前提になっているので相手がロングキックで前線からのプレスで空いた隙を狙っても、私たちはそこが弱点になることを理解していますし、そこに蹴られることを前提としてプレーしているので素早くスライドして対応することができていました」

リアクションとアクションの差。

この言葉の背景にある差はとてつもなく大きい。あくまで現段階の話だが、JFA福島の攻撃はリアクションになっている。ボールを素早く左右に揺さぶることで相手の隙が空くことを待っている。左右への揺さぶり方もただ最終ラインで横方向にパスを回しているだけで、『 自分たちから相手の隙を生む 』揺さぶり・仕掛けを行っていない。

この内容がとてもレベルの高い要求だということは重々承知している。大会期間中のコラムでも何度か触れたが、やはり日本最高峰の育成機関なのでこの部分に対する取り組みは行ってほしいとの思いがある。

東京オリンピックの試合を見てしまった後なので、余計にその思いがこみ上げる。

個人へのアプローチの質をどうチームに還元するか

マイナビ仙台の選手たちは自らのアクションで得た経験を分厚く積み重ねている。

だから今大会、関東の強豪を次々と撃破し、準優勝を勝ち取れたのではないだろうか。決勝は惜しくも敗れてしまったが、大会期間中、1試合ごとに自分たちのプレーに対する自信を噛みしめて成長したように思う。

この自信という部分について、小川監督はこう話してくれた。

「大会前は正直、あまり自分たちの力に確信がなかったです。今シーズンは関東勢と試合をしていないですし、東北リーグでは仙台大学に3対3で引き分け、大会1ヶ月前には聖和学園に0対1で負けてしまっていましたから。守備面に課題を抱えていました。しかし、大会が進むごとに多くの関係者に守備面を褒められることが増えたんです。確かに失点は、予選グループのジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18の1点だけです。

初戦の清水FC戦で14ゴールをとりましたが、普通にプレーしているだけでその結果は得られません。私たちは徹底して攻撃、そこにつながるプレーにこだわってやってきたからその結果が生めたと思っています。次のジェフユナイテッド市原・千葉レディースU-18では先制点を奪われましたが、前半のうちに同点にして引き分けにもっていけたのは大きかったです。すばらしいブロックからカウンターを受けて0対1になりました。あのブロックをこじ開けて点を取ることは容易ではありませんし、第1回大会優勝チームに対して『 先制点を奪われたけど、同点にもっていけた 』のは自信になりました。

また、予選グループ最終戦の三菱重工浦和レッズレディースユース(以下、浦和レッズレディース)に勝てたのも大きかったです。

なにしろ1月の『全日本U-18女子サッカー選手権大会』では0対2で負けていますから。本当に大会を通して少しずつ自信を積み上げていきました。浦和レッズレディースは各年代の代表選手がそろうチームです。試合前に、そういう個に対してどう対抗するかは話をしました。『人数でカバーするかというとそうじゃない。同じ学年だから個で対応しないとこれから先に何もできないよ』と伝えました。

実際に個の部分でしっかりと対応できたこともその後の試合でプラスに働いています。チームとして相手の良さを消せたのはあくまで結果論です。私たちは自分たちがやるべきアクションを起こして相手の良さを消し、ゴールを決めて勝てたことが一番の自信になりました」

この取材を通じてマイナビ仙台が実力を積み重ねられた大きな理由に「成長ベクトルを外に向けすぎることなく、常に自分たちにも向け続けてきた」ことが挙げられる。どうしても日本は「個かチームかという二極化的な議論に陥りやすい」が、サッカーというスポーツは個もチームも両方追い求めていくことがスタンダードであり、当たり前の取り組みである。

取材の最初にチームづくりについて聞いた答えをそのまま記したい。

「チームづくりでいうと、練習は約90分に収めて、自主練の時間を少しだけ設けていました。ケガ予防などによってその時間も減らしましたが、これはユースを立ち上げた頃からずっと継続していることです。当然、練習はただ長くするものではなく、濃い内容を端的に行うものですし、それを落とし込むのが私たちコーチの仕事です。

それに加えて『 選手の個性が大事 』だと思っています。私たちはそれがプレーの顔として表れるサッカーを目指しています。チーム全体で練習することで獲得できるものには限りがありますし、個人に向き合う時間を少しでも割くことは大事なことだと考えています。実際に、今大会は個性的な得点も数多く出せました。

例えば、浦和レッズレディース戦のゴールはなかなかチーム練習の中でドリブルに時間を割けないなか、股抜きで突破してチャンスを作り出してくれましたし、GKをギリギリまで見極めてボールを上げるタイミングも選手個人が練習の中でつかんできた感覚なのかなと思っています。

正直、今大会、私は選手に対して戦術的な話を新たにしていません。

『どのチームが相手でもやることは変わらない! あくまで自分たちは自分たちのアクションを起こしてプレーすることに変わりはないから、攻守にまず自分たちが意図する形を作り出すことが大事だ』と伝えました。常にどこが長所で、どこが短所かは選手に言っていますので、そこは選手の方が理解しています。事前にそこを理解し合っているから試合の中で素早く対応できたのではないでしょうか。私たちコーチングスタッフが言わなくても、選手たちは主体的に対応し、変化してプレーしていました。

ここはずっと心がけてチームづくりをしています。

ユース年代になると映像などの情報がある一方で、対応力のあるチームは試合の中で変化するので情報はあるようでないとも認識しています。これからプロ、大学とサッカーするにあたって情報戦略みたいなこともどんどん教育されていくと思うのですが、結局は試合当日、また試合中にどう対応していくかで結果は大きく左右されますので、その能力を磨いてあげるのが大事だと考えています」

小川監督をはじめ、マイナビ仙台のスタッフがすばらしい取り組みをしていることがよく伝わってくる取材だった。そして、最後に一つ付け加えておきたいのはこれまでの言葉=指導内容も今の選手たちに合わせたものなので、選手が変われば違うアプローチをとるということだ。

今大会、マイナビ仙台で最も印象的だったのは、選手間の会話が他チームに比べると断トツの量を誇っていたことだ。小川監督が話してくれた指導は、これがこのチームの特徴だったから『次から次へと考えさせるようなアプローチが可能だった』と推測される。さらに、マイナビ仙台レディース、いわゆるトップチームが求める選手とチームは、一人がいろんなことをできる選手であり、まずはゴールへの最短距離を素早く模索していけること。それをクラブ内で共有できているから、今大会に出場したユースチームがそれを体現し、準優勝という結果を得た。

このチームは9月18日(土)・19日(祝)に開催される予定の高校インターハイの優勝・準優勝チームと女子U-18日本一を決める「JFA U-18女子サッカーファイナルズ2021」に参加する。

約1ヶ月の間に、どんな成長を見せてくれるのか楽しみだ。

 

写真=佐藤博之
文責=木之下潤

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